いちばんすきな花

自分はある種のネット依存なので、毎日驚くほど様々なトピックをネット上で目の当たりにして、あれこれ考えては疲れ果てている。そのことに嫌気がさしてついyoutube等のこれまたどうでもいいショート動画などを見てしまう。

考えすぎたら考えなくさせ、考えなさすぎたら考えさせる。いったい自分でも何をやっているのかよくわからない。そしてそれをすべてインターネットを使ってやっているのが一番よくないのだろう。一応断っておくが、自分も現実世界では仕事もしているし、休日に出かけることもある。ただ、最近少し体調不良で、そのサイクルがうまくまわらなくなってしまっていることも事実。

大量のコンテンツの山の中で、私が最近ちょうどいい気分で見ることができているのがこの「いちばんすきな花」というドラマだ。このドラマの脚本家の方の前作はとても有名で、私も配信で見たが、実はそちらの作品はあまりハマらなかった。今作は楽しく鑑賞している。とはいっても決してわかりやすい恋愛ドラマというわけではないので、いわゆる「何も考えずに見られるドラマ」というわけでもないと思う。

おおざっぱに言えばこの作品の主要登場人物4人はみな、世間一般で言われる人間関係の枠にはまれずに生きてきた人たちだ。恋人を作る、友達を作る、学校のクラスや職場の同僚とほどほどに仲良くする、そういったことが苦手な人たちだ。

そしてそんな彼らを「傷つきやすい心優しい人間」として描くと見せかけて、まったくそんなこともない。例えば椿。優しい見た目と雰囲気、新居が決まった後に婚約破棄されても怒らない、職場で頼まれた仕事はなんでもやる、そんな良い人要素しかない人物だが、自分のことをこんな風に言う。「自分は本当はしゃべるのが好きだけど、しゃべると変な人と言われる。でも黙ってると何考えているかわかんないと言われる。だから本当にしゃべりたいことは初対面の人にしゃべる」。実際椿は、美容師(夜々)との雑談で「お花好きですか?」と聞かれて「花は好きですけど、花屋は嫌いです」と言い始め、滔々と自分語りをしだしたりする。「(あぁ…めんどくさそうな人だな)」と他人に思わせるには十分だ。

そんなめんどくさくて人間味溢れる彼らを見ていると、不思議と心が和む。一応恋愛ドラマ的な描写もあるにはあるのだが、「二人組が苦手」な彼らが好きな人と付き合えてめでたしめでたしとなるとも思えないし、そういう意味では展開の読めないストーリーでもある。やはり『カルテット』(坂本裕二)的なミステリ要素が絡んでくるのか?

仲野太賀にはまだまだ出演してほしい。